#7 大阪府「大阪市立自然史博物館」編

珍しいザトウクジラの全身骨格標が展示されている大阪市立自然史博物館。クジラの全身骨格標本だけではなく、ヒゲ板や下顎の骨など、各所にクジラ類の標本展示があり、見つけながら展示を見るのも楽しい博物館に遠征してきました。

東京駅から新幹線、地下鉄を乗り継ぐこと3時間30分。地下鉄長居駅に隣接している公園沿いに進み、案内板に導かれて博物館に到着。

 

 屋外植物園と併設した博物館なのですが、訪れた日は残念ながら雨…植物園を諦め、自然史博物館のチケットを受付で購入(共通チケットも売ってます)。入口の自動ドアを潜ると、お目当てのナガスクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラの全身骨格標本‼しかも屋外展示で天井から吊るされている!


その奥に自然史博物館に入館する入口があるのですが、2種類のヒゲクジラ、1種類のハクジラをじっくり比較観察できるので、夢中になり過ぎてたどり入口までなかなかたどり着けない…。3体の全身骨格をくまなく比較できる博物館は珍しいので、興味のあるパーツの比較にチャレンジしてみました。

ナガスクジラの耳の骨
ナガスクジラの耳の骨
ザトウクジラの耳の骨
ザトウクジラの耳の骨
マッコウクジラの耳の骨
マッコウクジラの耳の骨

▼耳の骨、肩甲骨、骨盤痕跡

1.耳の骨(鼓室骨(こしつこつ)

上顎骨の根本についている卵型の骨


ナガスクジラ  楕円形
ザトウクジラ  卵型で少し突き出るようについている
マッコウクジラ 俵型の十字のような形


ナガスクジラ 左側の肩甲骨
ナガスクジラ 左側の肩甲骨
ザトウクジラ 左側の肩甲骨
ザトウクジラ 左側の肩甲骨
マッコウクジラ 左側の肩甲骨
マッコウクジラ 左側の肩甲骨

2.肩甲骨
ナガスクジラ  横に伸びた扇型でヘラのような形
ザトウクジラ  綺麗な左右対称の扇型でじゃもじのような形
マッコウクジラ 左右非対称で頭側に出ている突起があるのが特徴的


ナガスクジラ 骨盤痕跡 前⇔後
ナガスクジラ 骨盤痕跡 前⇔後
ザトウクジラ 骨盤痕跡 前⇔後
ザトウクジラ 骨盤痕跡 前⇔後
マッコウクジラ 骨盤痕跡 後⇔前
マッコウクジラ 骨盤痕跡 後⇔前

3.骨盤痕跡
ナガスクジラ  へら状の形で短い
ザトウクジラ  へら状の形で棒状の部分が長い
マッコウクジラ 短いブーメラン型で大腿骨(丸い骨)が残っている


こんな感じで鯨種ごとに特徴が比較でき、とても勉強に。種類ごとに骨格の形状の違いが良くわかり、彼らが生き抜くために工夫を垣間見ることができます。そして床には各個体の輪郭が描かれていて、実際の大きさを体感できる仕掛けが!全身骨格標本をゆっくり眺めながら、生きている姿を想像できる貴重な展示。ずっと見上げているので、首を痛めないようにご注意を。

展示されている全身骨格標本のクジラは、すべて大阪湾に漂流してきた個体だそう。マッコウクジラ、ザトウクジラは、国内でホエールウオッチングできる種類なので想像はつきますが、ナガスクジラはなかなか珍しく、全身骨格標本が見られるのは、この大阪市自然史博物館と兵庫県立人と自然の博物館だけだそう。

ちなみに各種類の回収場所は…
ナガスクジラ  

1990年4月に堺泉北港に流れ着く。骨格標本の全長7mオス(大きさか見るとコドモ?)

 

マッコウクジラ 

2010年5月に堺泉北港で漂流していた個体を発見。全長9.1mのメス

 

ザトウクジラ  

2015年9月に大阪府岬町の長崎海岸沖に漂流していた個体を発見。全長7mの若いオス

満足いくまで観察した後は、やっと館内へ(笑)。トカゲ類の全身骨格標本がお出迎えしてくれ、恐竜や哺乳類の化石が数多く展示されているエリアに進むと、「ビルの下でねむるクジラ」というテーマで、クジラ類の化石や骨格標本を展示。大阪市内では数多くのクジラの化石が発見されており、主にザトウクジラ、ミンククジラを含むヒゲクジラ類が多く出土しているそう。ひときわ目を引いたのが、カツオクジラの頭骨化石。1966年に地下鉄工事中に、大阪市東成区今里駅の地下14mから出土。この辺りは大阪平野と呼ばれ、縄文時代はかつて海だったエリアで、その海底に沈んだ個体が発見されたそう。

そして、2階に上がるとサプライズ!なんとナガスクジラの全身骨格標本がもう1頭!こちらも天井に吊るされて展示!この個体は、1952年3月北海道圧岸沖で捕獲された若いメスの個体で、全長は17.3mとかなりの大きさ!室内で手が届きそうな低い展示でこちらもじっくり観察できます。どうやら耳の骨(鼓室骨(こしつこつ)は他の骨と色合いが違うので、あとから他の個体のモノを付けた可能性が。骨の一部に種類が標記されている(笑)

同じエリアのガラスケースには、スナメリの全身骨格標本が展示。ガラスケース越しなので自分のみたい骨の部位はみられませんが、とても綺麗な白色で、美しく処理されておりました。

復元ですが中新世中期から後期に生息していた束柱目のデスモスチルスの全身骨格標本が見られたのは嬉しかった! ※歯が丸い柱を束ねたような形をしていることからデスモス(束)、スティルス(円柱)の二語を合成して命名されたそう。

クジラの全身骨格標本だけではなく、ヒゲ板や下顎の骨など、各所にクジラ類の標本展示があり、見つけながら展示を見るのも楽しい博物館です。幼稚園、小学校の社会科見学コースになっており、学校の訪問日程が博物館のHPに掲載されているので、ゆっくりと静かに見たい方は要チェックです。訪れた日はなんと4校も集まっていまして、大変なことに笑。屋外の骨格展示スペースがお昼ご飯スペースと変わり、お昼を食べる子供たちを避けながらの観察に(笑)

博物館を堪能した後は、大阪ツアーの第二目的地「海遊館」へGO!

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大阪府大阪市

大阪市自然史博物館

営業時間:9時30分~16時30分
休館日:月曜日(休日の場合その翌日)・年末年始
入場料:¥300

展示骨格標本
ナガスクジラ×2
ザトウクジラ
マッコウクジラ
スナメリ

化石骨格標本
ナガスクジラ下顎骨
カツオクジラの頭骨
イルカ類脊椎骨

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行き方

東京駅 新幹線のぞみ → 新大阪駅 → 地下鉄長居 → 徒歩10分 → 大阪市自然史博物館

時間:3時間30分
費用:13940円
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訪問時期 18年10月
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