知と美術の殿堂「上野公園」にある、威風堂々とそびえるシロナガスクジラの実物大模型が目印の国立科学博物館。クジラの進化が垣間見られる化石標本を見に行ってきました!
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=554x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i964321f15c507a68/version/1576673779/image.jpg)
![【シロナガスクジラ実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i67e49dbaa75aa92e/version/1577942782/image.jpg)
JR上野駅の上野公園方面出口を出て、現代美術から古典まで様々な知的欲求を刺激する美術館を横目に、公園の一番奥にある国立科学博物館(通称:科博(かはく))へ。注目度の高い美術展や宝物展、いきもの展などの開催時は、JR上野駅の上野公園出口にあるチケット販売所や博物館で当日券を買うのもありですが、チケット売り場も並びます…。今回は常設展示なので、博物館入口のチケット販売機で購入しました。
科博は日本館と地球館の2つの展示棟があり、日本館のB1Fにはお土産コーナーや持ち込んだ食べ物も食べられる軽食コーナーもあります。館内での飲食は禁止なので、この軽食コーナーで食べましょう。また地球館の1Fにはレストランがあり、地球館の展示を見ながら食事ができます。
![地球館1F展示【コマッコウの骨格標本と実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/ic0f1c6517b7681ce/version/1577942741/image.jpg)
クジラの骨格標本は地球館の1Fで展示されています。1Fをウロウロと見ていると、吊り下げ式展示の全身骨格標本を発見!クジラの骨格標本は3種類と多くないですが、そこは科博。超珍しいコマッコウの骨格標本が!その横にはコマッコウの実物大模型も。この個体は千葉県で1997年7月にストランディングした個体(メス、208cm)を骨格標本にしたもので、背ビレや尾ビレの模型をつけて、生きている状態を想像できるような工夫を凝らした展示。もっと近くで観察したいのですが、吊り下げが高く見られない…。
その他には、巨大なマッコウクジラ(2000年4月、静岡県にストランディングした個体(オス、15.2m))やミンククジラ(2000年1月稚内市の海岸にストランディングした個体(メス、8.3m))の全身骨格標本が展示されていました。
![地球館1F展示【マッコウクジラ骨格標本】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/id7f1a7b9eadc25d4/version/1577942717/image.jpg)
![地球館1F展示【ミンククジラ骨格標本】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i7cb68dda46ee27d5/version/1577943795/image.jpg)
館内にはイルカの模型が点在していて、地球館にはハセイルカ(タイ、プーケット島でストランディングした個体をかたどり(オス、230cm))がミンククジラと並んで展示され大きさの比較ができます。さらにダンダラカマイルカまで!
また、日本館にはスナメリ(マリンワールド海の中道(原型個体貸与))、カズハゴンンドウ(2006年1月千葉県旭市の海岸にマスストランディングした20頭のうちの1頭を型取り)も展示。
残念なのは、これらの模型の名称プレートは館内にはなく…科博の常設展示データベースにアクセスしてようやく調べることができました。骨格標本の採取先や模型の原型元までWEBに記載されていますが、国立博物館なので、館内での名称表示はちゃんとしてほしかった…。
![地球館1F展示【ハセイルカ実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i929514deb9dab1f1/version/1577942694/image.jpg)
![地球館1F展示【ダンダラカマイルカ実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=429x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/ic884ed045b5ef754/version/1577942675/image.jpg)
![日本館3F南側展示【スナメリ実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i239488c0ead64c55/version/1577942921/image.jpg)
![日本館3F南側展示【カズハゴンンドウ実物大模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i8f265a42384862b1/version/1577942962/image.jpg)
大哺乳類展を開催するなど、数多くの哺乳類の骨格標本を収蔵している科博。毎年4月に収蔵庫がある筑波の分館が、1日無料で開放するオープンラボを開催。お宝標本の数々を見せてくれるので、興味のある方は科博のWEBをチェックまたは「オープンラボ 科博」で検索。日程が決まるとWEB上に同年開催のフライヤーページがヒットします。
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今回のお目当ては、B2「地球環境の変動と生物の進化」にあるクジラの化石標本。展示テーマは「水に戻った四肢動物」。哺乳類と爬虫類の化石が左右で対比展示され違いも比較でき、クジラが水生への対応していく様をパネル使って、丁寧に解説してくれています。
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新生代の始新世初期から中期(約5000万年前~約3700万年前)の地層から出土した化石標本たち。四肢がある状態から、徐々に吻が伸びて、やがて骨盤が退化し水生適応していく。約1300万年の長い年月を経て適応した様を一目で比較できる贅沢な展示。クジラの化石は全部で5つ。ひとつひとつの展示解説やWEB解説をまとめてみると…
![【パキケトゥス・アトッキ(パキケトゥス科/始新世前期 約5000万年前)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=416x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i4de2bf96c53df97b/version/1577944446/image.jpg)
乾燥した大地で暮らしていた「パキケトゥス・アトッキ(パキケトゥス科/始新世前期 約5000万年前)」は、パキスタン~インド西部(川辺)で発掘。足首の骨(距骨)の形からカバやウシの仲間から進化。また、雨季の洪水によってできた川や湖の辺で主に甲殻類や軟体動物などを食べていたと考えられ、全長は約2mと推定されているそう。
![【アンビュロケトゥス・ナタンス(アンビュロケトゥス科/始新世前期 約4800万年前)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i8101e3d2f6008f5e/version/1577944486/image.jpg)
「アンビュロケトゥス・ナタンス(アンビュロケトゥス科/始新世前期 約4800万年前)はパキスタン北部で発掘。吻が大きく伸び、四肢は短く泳ぐことへ適応している痕跡が。一方で頸椎は現生の鯨類のように圧縮されておらず長く、恐らく首は動かせたのでは?海辺に身を隠して水中を這うように動き、魚介類だけでなく陸上の小動物なども食べていたと考えられ、全長は約4 mと推定されているそう。
![【カッチケトゥス・ミニムス(レミントノケトゥス科/始新世中期 約4600万年前)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/ic209bddef2e4307d/version/1577944516/image.jpg)
「カッチケトゥス・ミニムス(レミントノケトゥス科/始新世中期 約4600万年前)」はインド北西部で発掘。アンビュロケトゥス同様に吻が長く、体の大きさに比べて頭骨が大きいのが特徴的。四肢は四足動物に比べて短く、手足のイメージ骨はヒレを思わせる形状で骨盤も小さい。水中を歩いていたと考えられており、この四肢の形態では大きな頭を陸上で支えるのはとてもキツそうです。また、尾を左右に振って泳いでいたかのように尾骨が異常に長い。ラグーンに棲み、カワウソのような生態だったと考えられ全長は約2mと推定されているそう。
![【バシロサウルス・ケトイデス(バシロサウルス科/始新世中期 約3800万年前)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=429x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i2a1488d584a5ed63/version/1577944578/image.jpg)
「バシロサウルス・ケトイデス(バシロサウルス科/始新世中期 約3800万年前)」はアメリカで発掘。後脚はなく、尾の骨が長く、全体の形状は流線形を思わせる。肩甲骨は現生鯨類の形態に類似。腕は鰭状の形態を思わせ、胸骨は大きく太いため、水圧を逃がすような構造でないので、深くは潜ることは難しそうです。頸椎は短く、現生の鯨類のように首の可動域は狭い可能性も。現生の鯨類のように同じ形をした歯ではなく、哺乳類の基本歯式(切歯(門歯),犬歯,前臼歯(小臼歯),臼歯(大臼歯)の4種類)の歯を持っているそう。素人目には全部犬歯に見えます…。全身はかなり細長く水中をうねるように泳ぎ、全長は20 mに達したと考えられているそう。
![【ドルドン・アトロクス(バシロサウルス科/始新世中期 約3700万年前)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i1c7ffb72da7720ee/version/1577944617/image.jpg)
「ドルドン・アトロクス(バシロサウルス科/始新世中期 約3700万年前)」はエジプトで発掘。肩甲骨は現生鯨類の形態に類似。腕はより短くなり、鰭状の形態を思わせる。頸椎も短くなり頭は大きく、体の形態は流線形を想像させ、骨盤を含めた後脚はより小さく、陸上で体を支えらそうにありません。泳いで暮らしていたと考えられており、水中生活により特化していたのでしょうか?最後のムカシクジラの一種。現在のハクジラやヒゲクジラにつながる系統と考えられ、尾ビレの形などから高速で遠洋を遊泳できたと推定されています。全長は5mほどあったらしい。
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5つの化石の推定年代幅は約1300万年。いかに長い期間をかけて進化をしてきたがよくわかります。この期間の比較をわずかな時間でできてしまう化石標本の凄さに改めて気づかせてもらえました。
![地球館B2展示【ヤノケトゥス頭骨(ヤノケトゥス科/古第三紀~始新世)】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=435x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i9aca4abaac451c52/version/1577944671/image.jpg)
同階にある「地球環境の変動と生物の進化 -誕生と絶滅の不思議-」の展示コーナーには、最古のヒゲクジラと言われる「ヤノケトゥス(ヤノケトゥス科/古第三紀~始新世)」の頭骨を展示。この標本は南極・セイムール島北西部で発掘。
ヤノケトゥスには先端がギザギザした歯が上下交互に生えていて、この歯を使ってクジラヒゲのように濾しとって、エサを食べていたのではないか、また歯の周辺には血管の溝が複数見つかっていて、クジラヒゲのようなモノもあったのでは?と考えられています。また体長は10mを超えていたそう。
![地球館B2展示【周南極海流 模型】](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=10000x435:format=jpg:rotate=270/path/saa7b57cd52b5bafe/image/i90b6e6ed2c46bcac/version/1577943976/image.jpg)
約3500万年前に南極大陸の周りを時計回りに流れる海流「周南極海流」の誕生により、氷床が生まれ冷やされて重くなった海水が深層流となって北上し地球規模の寒冷化が起こったと考えられています。南大洋では、プランクトンや小魚、エビがおり、これを食べるヒゲクジラ類の一種が「ヤノケトゥス」と考えられています。
レプリカですが珍しいクジラの化石類が展示されているので、もう少しムカシクジラ類について勉強してから、また訪れたい博物館。クジラの進化に関する書籍を2冊発見しましたので、ご参考までに紹介します。
ちなみに隣の日本館には、映画ドラえもん『のび太の恐竜』で有名な「ピースケ」こと、フタバスズキリュウの化石標本が展示され、さらに束柱目の2種類の化石標本も展示。名前の由来となった歯の標本もしっかり観察できます。訪れた際はこちらも是非。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=554x10000:format=jpg/path/saa7b57cd52b5bafe/image/if1b3da5e89e3a3d2/version/1576676219/image.jpg)
展示を見た帰りに、情報を詰込み過ぎたのでアタマへの御褒美に、行列必死の「伊勢ろく」の親子丼を食べに。本当にトロトロで美味しかったです。でもプラスチックのスプーンで食べるのはなんだか悲しかった…。
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国立科学博物館
営業時間:9時30分~16時30分
休館日 :月曜日(休日の場合その翌日)・年末年始
入場料 :¥630
全身骨格標本展示
マッコウクジラ
コマッコウ
ミンククジラ
模型展示
<地球館>
ハセイルカ
コマッコウ
ダンダラカマイルカ
<日本館>
スナメリ
カズハゴンンドウ
全身化石標本
パキケトゥス・アトッキ(レプリカ)
アンビュロケトゥス・ナタンス(レプリカ)
カッチケトゥス・ミニムス(レプリカ)
バシロサウルス・ケトイデス(レプリカ)
ドルドン・アトロクス(レプリカ)
ヤノケトゥス頭骨(レプリカ)
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行き方
東京駅 → 上野駅 → 徒歩10分 → 国立科学博物館
時間:20分
費用:157円
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訪問時期 19年12月
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